狒々門の奥の入江のむじな島にて。

大猿の如きものを連れた天人らしきものを見たあの日から、ぼくはずっとここにいます。

ビーフィータージンと、遙かなる薄桃色をしたオールナイトあるいはミラージ徹夜日記。

最後に徹夜をしたのは、たぶんちょうど一年くらい前だと記憶している。

 

その頃勤めていた会社の仕事で、通常業務に加えてぼくはプロモーション系の映像制作をしていたのだけれど、様々な業務が折り重なって依頼され、しかもそういうことをまともにスケジューリングやらマネージメントできる人材がその会社には皆無で、しかしぼく自身は自らの業務管理を常にしっかりおさえているので、「スケジュール的に無理だよ。」と散々念をおしたのだけれど、みんなアホなので何を言っても理解せず、アホみたいな量の仕事を振られて徹夜をするはめになった。

 

某所の藍染職人のプロモーション映像と、デジモンとのコラボレーションの広告動画を並行して黙々と作りながら夜が明けた。その上、結局どちらの動画も日の目を見ることがなかった・・・、アホか。どちらも結構なクオリティーで作ったのに・・・。

 

なぜそんな話を書き始めたのかと言えば、

 

「きょう、ちょっと、徹夜でもしてみようかしら、うふ。」

 

と、ふと思ったからである。

 

おうち時間で、徹夜。

 

徹夜をしてみようと思った理由はいくつかあるが、夜ごはんをやけに食べすぎて、近年稀に見る満腹感に襲われていて、このまま眠ってしまったらきっと悪いことが起きるに違いない(すげえ太るとか・・・)という、くだらない、かつ、わけのわからない妄想にかられたからというのが、正直なところである。

 

かつてまだずいぶん若かりし頃は、よく徹夜をしたものだ。

 

ただぼくは、仕事で徹夜をするというのはバカのやることだと思っているので、そういう経験はほぼないに等しい。徹夜をするのは大抵は、一晩中お酒を飲んでいたり、カラオケで歌いまくったりすることがほとんどだった。

 

でも気が付けば、そんな徹夜をすることもなくなっていた。

 

あ、でも、この文章を書いていてやっと思い出したけれど、大学を卒業して初めて勤めた会社の仕事はテレビ番組の編集の仕事でさ、あの頃はずっと毎日徹夜だったんだ・・・。朝八時半に出社して働きだして、仕事が終わるのが次の日の十五時とか・・・、ずっと起きてるんだよ、ずっと、アホちゃう。

 

あの頃のことは、断片的にいろいろ覚えている。徹夜だけではなく業務の内容的にもしんどい日々ではあったが、まあそれなりに楽しい記憶も少しだけある。

 

毎朝、純喫茶っぽいところで、サンドイッチとコーヒーの朝食をとっていて、そこが結構好きだったこと。トイレで坂上二郎に出会って、少しだけ言葉を交わしたこと。仕事がアホらしくなって、毎晩深夜に仕事場を抜け出して、近くのコンビニで缶ビールを買って、誰もいない真っ暗な公園でひとりビールを飲んでいたこと。

 

仕事場の出入り口には夜間、同じ守衛さんがいて、ぼくは毎晩外に出ていくものだから顔見知りになった。最初は「どちらへ?」って聞かれるから、「ちょっとコンビニに・・・、」って答えていたんだけれど、その後公園でかなり長い時間ビールを飲んでブラブラしてから帰るのでなにか言われるかなって思っていたのだが、結局一度もそのことに関して突っ込まれることはなかったし、守衛さんはその後、「コンビニですね、いってらっしゃい!」と言ってぼくに笑顔を向けてくれた。

 

ぼくがある日、その守衛さんに「じつはぼくここの仕事やめることにしたんです。」と告げると、守衛さんは、「えっ、やめてしまうんですか・・・、そうですか・・・、せっかく知り合えたのに・・・、ざんねんです、なんだか悲しいなあ、本当にかなしい・・・、でもまあ、元気でね!」と言ってくれたことを覚えている。

 

結局、その仕事はアホらしくてさ、すぐに、たしか半年くらいで辞めてしまったんだ。

 

ここまで書いて、凄まじくのどが渇いたので、ジンのソーダ割りを飲むことにする。家にあったジンはビーフィーター、特にビーフィーターを好んで飲むわけではないが、今家にあるのがビーフィーターだけだったから。そして氷は入れない。

 

ちなみにビーフィーターって、色んな種類あるんだね。「BEEFEATER BLOOD ORANGE GIN」とか「BEEFEATER PEACH & RASPBERRY GIN」っていうのもあるみたいだけれど、日本では売っていないんだろうか?

 

 

 

さて、というわけで、ぼくは果たして今日、徹夜できるのだろうかという薄桃色の不安が周囲に漂う。

 

でも徹夜してさ、その次の日も眠らずに夜まで過ごすと、ちょっとおかしな高揚感と、心地よい浮遊感と、なんだか蜃気楼のような気分がもれなくついてきて、いざ眠る時になるとすっごく気持ちいいんだよなっていう記憶があるんだけれど、けれどさ、一年ほど前に徹夜した時には、それはなかったんだよなあ。

 

お酒を飲んでの徹夜では、なかったからなのだろうか。

 

それはさておき、如何にして徹夜を成し遂げようかという問題、以下にその戦略を箇条書きにして、この日記を終える。徹夜できたかどうかは、どうでもいい情報だが、いずれ日記として綴るかもしれない。

 

・映画を何本か観る。(五本くらいかな)

ウェブログのタイトル画像制作に没頭する。

・夜の海に泳ぎに行く。

・往復四時間かけて徒歩で近所のコンビニに缶ビールを買いにゆく。

ビーフィータージンを一本あける。(眠っちゃうかも)

 

もうすでに眠いぞ、がんばれ、おれ。

 

今週のお題「おうち時間2021」