人間が野生の犬と対等に戦うには、天下の業物妖刀村正が必要な話。
今ぼくの住んでいる地域には、野犬がいる。
野良犬ではなく、あくまでも野犬だと思う。
野良犬と野犬がどのように違うのか、その厳密な区分に関しては詳しく知らないが、野良犬というのは人間に飼われていたが後に主人を失ったり捨てられたりした元ペットで、一方野犬というのはもともとは捨てられたペットだった点では野良犬と同じだとは思うが、その後に野生化して繁殖した犬たちではないのだろうか、たぶん。
いずれにせよ、このエリアには野に放たれた人間に飼われていない犬がウヨウヨいる。
この地に移住してきて初めて野犬の群れに遭遇し、なおかつ吠え立てられ威嚇された際には、それが深夜だったということもあるのだが、なかなか面食らったし、かなり恐ろしかった。
やばい、襲われる・・・、と真剣に身の危険を感じた。
何匹もの巨大な犬が、牙をむき出しにしてうなりながらジリジリと近付いてくるシチュエーションなんて、そうそうあるものではない。てか初めて経験したし。
その後も、昼でも夜でも頻繁に野犬の群れを見かけるようになった。
以前にもかなり山奥の田舎で暮らしていたことはあるが、野犬なんて見たことはなかった。
このあたりにいる野犬は、野生化して繁殖する元になった犬種にもよるのだろうが、見かけるもののほとんどがかなり大型である。二足で立ち上がったら確実にぼくの身長より高い。ぼくが遭遇した中で最大のものは、子牛くらいあった、いやまじで。さらに体がひどく汚れていたり、皮膚病でゾンビのようになっている個体もいて、ヴィジュアルとしての恐ろしさがかなり増している。
野犬は、大抵は一匹ではなく群れをなして行動していて、近付くとかなりな勢いで威嚇されるケースが多い。歯をむき出しにして吠えられて、吠えるだけで逃げていく場合もあるが、やばい時にはこちらに向かって走ってきたりする。まあかなりな田舎なのでほとんどの人が車で移動しているから、多くの住人は野犬に威嚇されるという経験がほとんどないのだと思うのだが、ぼくは車を持っていないので基本的に徒歩で移動しているから、野犬に遭遇して威嚇される確率が圧倒的に高い。
まあでも、威嚇はするものの、流石に人間を襲うことなどないだろうと思っていたのだが、けっこう襲われているらしい・・・、「野犬に襲われる事件が多発しています!」という立て札がエリア内に立てられているし、車に乗らずに徒歩移動をしているおばあちゃんが長い棒を持って歩いていたので杖かと思ったら、対野犬用の武器だった。
おいおい、人間が襲われているんだったらどうにかしろよ、行政。
それにしても対野犬用の棒を持ったおばあちゃんだが、とんでもない武術の達人でない限り、あのデカさの野犬に棒では対抗できないだろ。
昔なにかのテレビ番組で、ダチョウ倶楽部の寺門ジモンが、「人間は日本刀を持った状態でやっと野犬と対等に戦える。」というようなことを言っていた。まあ誰もが日本刀を使いこなせるわけではないが、つまり人間が素手では野犬には到底立ち向かえないということだろう。
現代において、帯刀して歩いている人などいないので、例えがちょっと分かりづらいが・・・。まだ「人間はSmith & Wesson SW99を持った状態でやっと野犬と対等に戦える」と言ったほうが例えとしてはわかりやすいような気がする。
いずれにせよ日本では刀も銃も持ち歩けないけれど。
ぼくはこのエリアに住んで一年ほどになるが、幸いにもまだ野犬に襲われたことはない。
そして、毎日のジョギング中に必ず遭遇するとある野犬の群れには、存在を認識されたらしく、最初はすげえ吠えられたり、すごいスピードで逃げていかれたりしていたのだが、この頃近付いてもまったく無反応になった。今日なんて、距離にしたら30センチくらいまで近付いたが、みんな顔をこちらに向ける程度だった。
おそらくは、ぼくが無害だということを理解したのだろう。
ただしその他の多くの野犬の群れにはまったく認識されていないので、気が抜けない。
やはり日本刀か拳銃を持ち歩く必要がありそうである。
ちなみにこの記事を書くにあたって、近所のおばちゃんに、「誰か野犬に襲われた人を知っていますか?」と聞いてみたところ、「人は知らないけれど、あそこの家の犬は野犬に食い殺されたよ、血だらけで、食われて死んでたらしい。」と言っていた。
怖いわ。
とまあそんなわけで、みなさんも野犬に戦いを挑む際には、最低限度の装備として日本刀を携えていってくださいませ。
村正がいいね、村正が。
かしこ。