狒々門の奥の入江のむじな島にて。

大猿の如きものを連れた天人らしきものを見たあの日から、ぼくはずっとここにいます。

アーサー王伝説『ガウェイン卿と緑の騎士』の映像化、デヴィッド・ロウリー監督による『ザ・グリーン・ナイト(The Green Knight)』。

作者不詳のアーサー王物語『ガウェイン卿と緑の騎士』

アーサー王物語あるいはアーサー王伝説の中の一つに、『ガウェイン卿と緑の騎士』 (Sir Gawain and the Green Knight) というものがある。

 

これは14世紀後半に書かれたとされる中世アーサー王物語の一つであり、古英詩における韻律法(主に語頭の子音を合わせて調子を作り出す頭韻)で書かれている韻文で、合計で101連、全2530行に渡る物語である。

 

本作品の作者は不詳とされているが、同作品の唯一現存する原典『MS Cotton Nero A.X.』という写本内に収録されている『真珠』(Pearl)、『忍耐』(Patience)、『純潔』(Cleanness) の作者と同一人物であると考えられており、その作品名から「ガウェイン詩人」あるいは「パール詩人」などと呼ばれている。

 

また、使用言語は1300年代後半の英語で、イングランド北西ミッドランド地域(チェッシャー・ランカシャー周辺)の方言で書かれているため、なかなか難解なのだそうである、読んだことないけれど。

 

Sir Gawain first page 670x990

 

そもそも、アーサー王とかガウェインとか、いったい誰やねん?っていう人もいるかもしれない。

 

アーサー王と円卓の騎士

アーサー王(King Arthur)とは、簡単に言えば、5世紀後半から6世紀初めのブリトン人の君主である。しかし、そのほとんどが民間伝承や創作に登場するものであり、実在の人物かと言えば、それは今もって定かではない。

 

アーサー王伝説―7つの絵物語

アーサー王伝説―7つの絵物語

 
アーサー王伝説 (「知の再発見」双書)

アーサー王伝説 (「知の再発見」双書)

 

 

そしてガウェインだが、アーサー王に仕えたとされる「円卓の騎士」の一人であり、アーサー王の甥に当たる人物である。また彼は、朝から正午までは力が3倍になるという特殊能力を持つとされており、ガラティーンという名の愛剣を所持している。これはアーサー王におけるエクスカリバー的な聖剣であるそうだが、その詳細や入手経路に関しては不明だとのこと、ただエクスカリバーの姉妹剣だと言われている。

 

そして前述の円卓の騎士、これもなんやねん?って人もいると思うよね・・・、まあこれはキリスト教とか聖杯伝説とかにも深い関わりがある話でさあ、説明しだすときりがないので、簡単に言えば、アーサー王直属の精鋭騎士団の名称だと言っておこう、もっといろいろあるけれど。そして前述のようにガウェインも円卓の騎士の一人である。

 

『ガウェイン卿と緑の騎士』ってどんな物語なの?

さて、では『ガウェイン卿と緑の騎士』とはどんな物語なのかと言えば、第一部としてこんな話から始まる。

 

アーサー王の宮殿で新年会が開かれている最中、突然、衣服から髪から皮膚から、乗っている馬から、すべてが緑尽くめの「緑の騎士」なるものが現れ、ガウェイン卿にこう言い放つのである。

 

「私の首を大鎌でかき斬ってみろ!もしそれでも私が生きていたら、私の挑戦を受けてもらうぞ!」

 

でもって、ガウェインはこの挑発にのり、緑の騎士の首を一撃で切り落とすのだが、緑の騎士はまったく動じず、自分の首を拾って小脇に抱えると、猛々しく叫びながら馬で走り去ってゆくのである。

 

「一年後、緑の礼拝堂でお前を待っているぞ!そこでお前に仕返しの一撃をくれてやるからな!」

 

Gawain and the Green Knight

 

初っ端からやけに理不尽で、怖い話である・・・。

 

ちなみに、この『ガウェイン卿と緑の騎士』を、かのJ・R・R・トールキンことジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン(John Ronald Reuel Tolkien)が現代英語に訳しているそうである、ぼくはまだ読んだことがないけれど。

 

 

『ガウェイン卿と緑の騎士』の映像化

そして、この『ガウェイン卿と緑の騎士』を映像化した映画作品、『ザ・グリーン・ナイト』(The Green Knight)が、2021年7月30日より公開となる!

 

 

邦題はまだ未定のようだけれど、あまりおかしな邦題にならないことを願うばかりである。

 

監督を担うのは、『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』(A Ghost Story)や『さらば愛しきアウトロー』(The Old Man & the Gun)のデヴィッド・ロウリー(David Lowery)。

 

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そしてキャスティングは、ガウェイン役にダニー・ボイル(Danny Boyle)監督による『スラムドッグ$ミリオネア』(Slumdog Millionaire)やガーズ・デイビス(Garth Davis)監督による『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』(Lion)で知られるイギリス出身の俳優デーヴ・パテール(Dev Patel)。

 

 

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アーサー王役には、サー・リドリー・スコット(Sir Ridley Scott)監督による『プロメテウス』(Prometheus)でのファイフィールド(Fifield)役が印象的だったイングランドの俳優ショーン・ハリス(Sean Harris)。

 

 

 

グィネヴィア(Guinevere)役には、HBOのテレビドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』(Game of Thrones)のライサ・アリン(Lysa Arryn)役で知られるスコットランドの女優ケイト・ディッキー(Kate Dickie)。

 

 

 

そして本作品の要、緑の騎士役には、こちらもHBOのテレビドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』でダグマー役(シオン・グレイジョイを助ける人ね)を演じていたり、『ハリー・ポッター』(Harry Potter)シリーズの死喰い人アミカス・ カロー役で知られるイングランドの俳優ラルフ・アイネソン(Ralph Michael Ineson)。

 

 

 

『ザ・グリーン・ナイト』オフィシャル・ポスターの数々

本作品のオフィシャル・ポスターも、先にあげたガウェインバージョンの他に、キャラクターバリエーションがいくつか作られていて、なかなかかっこよいので取り上げておくよ。

 

 

 

 

『ザ・グリーン・ナイト』の予告編を観よう!

というわけで、本作品のオフィシャル・トレーラーがA24によって公開されているので、取り上げておきたい。

 

 

ちなみにぼくは本気で観たい映画のトレーラーは極力鑑賞前には観ないようにしていて、本作品に関しても非常に期待しているので観ないつもりだったのだけれど、うっかり冒頭を観始めてしまって途中でやめたよ。

 

でも、めっちゃおもしろそうじゃん!

 

本作品の公開は最初にも言ったけれど、2021年7月30日からだよ、日本公開日はたぶんまだ未定。