狒々門の奥の入江のむじな島にて。

大猿の如きものを連れた天人らしきものを見たあの日から、ぼくはずっとここにいます。

聞けウィリアム・シェイクスピアよ、それでもぼくはそうめんを後悔するぞ日記。

昨日、大量にいただいたビワを果実酒にするために、街まで往復30キロ歩いて果実酒用の瓶とホワイトリカーと氷砂糖を買いに出かける。

 

 

そのついでにスーパーによると、そうめんが売っていた。

 

しばらく悩んだ挙げ句に、その時はそうめんを買わずに帰宅する。

 

そうめんの思い出って、何かあったかな。

 

 

幼い頃、夏になると昼ごはんによく、そうめんが食卓にのぼった。

 

ぼくの実家のそうめん時には、必ず錦糸卵が用意された。甘い甘い錦糸卵で、そうめんと麺汁と一緒に食べるあの味が、ぼくはすごく好きだった。

 

冷やし中華にもよく錦糸卵がトッピングされるが、あれとはまったく別物な感じがする。

 

しくったなあ、そうめん買ってくればよかった。あと一緒に卵も買ってくればよかった。

 

ちなみに昨日は、竹やぶで採ってきたクロダケと豚肉を炒めて食べた。

 

クロダケと豚肉を炒めたやつも、そうめんに合うだろうなあ。

 

しくった、そうめんを買ってくればよかった。

 

昨日はクタクタに疲れたので、久しぶりにビールを飲んだ。毎日お酒は飲むが、普段はあまりビールは飲まない。でも昨日は炎天下の中を30キロ歩いて喉がカラカラだったので、そこはビールだろうと思い、350mlの缶をひとつ空けた。ビールは飲んでもそのくらいがちょうどよい。

 

ビールにそうめんもいいなあ。

 

しくったぜ、やっぱりそうめんを買ってくるべきだった。

 

ビールを飲んだ後にジャンクなデイリーワインを飲んでごはんを済ませ、そのままワインを飲みながら映画を観ていると、近所の友人からLINEでメッセージが入り、

 

「マグロ、いりますか?いまから持っていきますね!」

 

とのことだった。

 

時間は22時を過ぎていたが、映画を途中でとめてマグロを待つことにする。

 

近所の湾でマグロを養殖していて、それが時々逃げ出して、捕れることがあるらしい。

 

しばらくして、友人が奥さんと共に家にやってきた。

 

ぼくは小さなマグロのサクを想像していたが、友人が手に持ったビニール袋には、巨大なマグロの頭と巨大なマグロの胴体が入っていた。つまり一匹だった。

 

頭をあげると言われたが、冷蔵庫に入るような大きさではなかったので断り、結局、その場で更に捌いて、巨大な切り身をもらう。それからひとり台所で切り身を捌きはじめ、気が付けば日を跨いでいた。おおよそトロとか大トロの部分で、巨大なサクが何個も出来たところで、なんだかもうどうでもよくなる。

 

部屋の中には、マグロの脂の匂いが立ち込める。

 

手はマグロの脂にまみれて、洗っても洗っても匂いが取れなかった。

 

 

そして眠りにつく。

 

きょうは満を持してそのマグロを食べるのだが、マグロにもそうめんが合いそうだなあ。漬けにしたマグロとそうめん、美味しいと思う。

 

クソっ、そうめんを買ってくるべきだった。

 

変えられない過去を悔いても意味がない、とウィリアム・シェイクスピアは言うが、ぼくは悔いる、そうめんを買ってくるべきだった。

 

くそっ!

 

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今週のお題「そうめん」